最近読んだ本の中から2点。
半島を出よ (下) 村上 龍
村上龍が月曜日のテレ東で経済トーク(?)番組をやっている。
ゲストに質問するときに、彼自身の尋きたい気持ちが前面
に押し出されてて、その様が非常に面白い。以上、余談でした。
村上龍の作品が好きだ。好きだというのはちょっと違うか。
凄いグロだったり、クドかったり、話が進まなかったり。
作品によってそれらがオモシロイとツマラナイに大きく振れる。
そしてそれは、読み物として、の話。
福岡が舞台だったのもあって地理関係も良くわかり、というかほぼ完全なビジュアルとして
飛び込んできたので私にはとても読みやすかった。状況がわかるので、他に気が回せる。
今あるこの世界が、日本が、なんかおかしいと思う。危ないと思う。でも危機感がないと思う。
そう思わせることができるだけでもう(読み物としてはともかく)十分だと思う。
この手の作品に何度か見かけた「自分と世界との境界線がぼんやりする」という表現がある。
漫然と感じていたわけのわからない不安な感覚が、そう表現されているのを初めて読んだ時
私は安心して不安に思っていていいのだ、と妙に納得した。
多分、不安であることを確認して安心するために、私は龍の本を読んでいるのだと思う。
イエティの伝言 薄井 ゆうじ
薄井ワールド、ファンタジーです。
この人の作品って「上手い」とかいうのと違って本当になんとも
いえない味があるのですが。うけ付けない人は多いだろうなぁ。
個人的には、新井素子と並べて二大「私は好き」作家。
文明っていったいなんだろう、と思う。
自分の身体とその能力以外には必要最低限しか持たず、殺さず、孤高で勁く、愛という観念を
持たないイエティたちの生命としての潔さ。「アイシテイナイ」は「愛している」と同じ。愛は
憎しみの中にのみ存在する。理想がどこにあるのか、それさえも流動的なあやふやさ。
お酒と、旅と、人と自然を愛する人の文章だなぁ。
書き口も題材も違うのでぱっと見の印象は随分違いますが、どちらからも私は、
「惑わされるな、本当に大切なことを見極めろ、今すぐに」ということを受け取ります。
すぐそばにある、近すぎて見えなくなりがちな真実。